focuslightsの満たされない日々

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煮えたぎる液体にサーバーを沈めるって意味あるの?

先日、まとめサイトを読んでいたら「煮えたぎる液体にサーバーを沈めて冷却するMicrosoftのデータセンター」という記事がありました。

gigazine.net
元記事はmicrosoftの公式ブログ

Microsoftが公式ブログで、低温で沸騰する液体にサーバーを浸して冷却させる「二相式液浸冷却システム」を採用した自社製データセンターについて発表しました。
(中略)
Microsoftの先進的データセンター開発グループで主任ハードウェアエンジニアを務めるフサム・アリッサ氏は、「この二相式液浸冷却システムを本番環境で運用しているクラウドプロバイダーは当社が初です」と述べました。
(中略)
先進的データセンター開発グループのエンジニアであるクリスチャン・ベラディ氏は「高温になるチップを冷却する上で、空冷ではもはや十分とは言えません。そこで、チップの表面で直接液体が沸騰して冷却を行う液浸冷却の採用を検討しました」と述べました。
(中略)
Microsoftが液浸冷却システムの効果を調査した結果、この冷却方式によりサーバーの消費電力を5%~15%減少させることが可能だと判明しました。そこでMicrosoftは、データセンターの設計を手がけるWiwynnと提携して、電気素材メーカーの3Mが開発した「高機能性液体」でサーバーを冷やすデータセンターを建設しました。

こうして運用が開始された二相式液浸冷却システム採用のデータセンターは、単に消費電力が少ないだけでなく、水を消費することもないため、「2030年までに消費するより多くの水を供給できるようにする」というMicrosoftの持続可能性への取り組みにも大きく貢献すると期待されています。


会社のブログで、わが社はこんなことをやってますよ~と紹介するのには何の問題もありませんが、
それが、さも革新的な手法であるかのような書き方には違和感を覚えます。



まず、
>空冷ではもはや十分とは言えません。そこで、チップの表面で直接液体が沸騰して冷却を行う液浸冷却の採用を検討しました
なんて、もはや当たり前のこと。

昔流行った「水冷」は水が漏れると電気回路がショートしてしまうので、最近ではあまり聞かなくなりましたが、

というのは10年以上前から行われています。

microsoftの記事の目玉?は「低温で沸騰する液体にサーバーを浸して冷却させる「二相式液浸冷却システム」」
のようで、3Mから販売されている冷媒(おそらく、フロリナート)を使用したところのようですが・・・
そんなもの、検索すればいくらでも出てきますよね。

もしかするとマイクロソフトはフロリナートではなく、3MのNovecを利用したのかもしれません
>データセンター向け沸騰冷却型液体直接浸漬冷却 Novec™ (ノベック) 高機能性液体、フロリナート™ フッ素系不活性液体(youtube
データセンター向け沸騰冷却型液体直接浸漬冷却 Novec™ (ノベック) 高機能性液体、フロリナート™ フッ素系不活性液体 - YouTube
だとしても、販売元の3M自体が、「データセンター向け」って宣伝しているような品ですしね。

だいたい、空冷で追いつかなくなったのは、エネルギー効率の悪いチップと無駄の多いOSを利用しているからではないでしょうか?



この記事を読んでいて、一番疑問に思ったのが、
>こうして運用が開始された二相式液浸冷却システム採用のデータセンターは、単に消費電力が少ないだけでなく、水を消費することもないため、「2030年までに消費するより多くの水を供給できるようにする」というMicrosoftの持続可能性への取り組みにも大きく貢献すると期待されています。

データセンターが水を消費する?って、水冷式を前提としているのでしょうか?
フッ素化合物で冷却したとしても、蒸発した成分は強力な冷却装置で冷やさなければならず、その装置の冷却が必要なわけで・・・

多少のエネルギー効率化につながったとしても、持続可能性(SDGs)に影響を及ぼすほどではないと思うのですが。

世の中、適当なこじつけでSDGsを名乗る会社がおおいなぁ。と思ったfocuslightsでした。




それにしても、低沸点フッ素化合物での2相冷却って、本当に良いものなのでしょうか。
沸騰して気体が発生するということは、その分、熱交換効率がおちるということ(気体の熱伝導率はとても低いので)。
さらに、気体が発生するということは、どんなに密閉しても多少のガスが大気中に拡散するのは不可避(ガチで密閉したら、爆発してしまうので)。
3Mの冷却システムは、「フッ素化合物だけど、オゾンは破壊しない」というのが歌い文句ですが、体に安全かどうかは別の話。
マイクロソフトの技術者が、マスクとニトリル手袋でガッチリガードしている写真が印象的でした。