2021/7/7に「第63回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第12回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」が開催されました。
定期開催されている分科会。
いまは、コロナワクチン副反応の報告の場として注目を集めています。
で、分科会の資料によると、令和3年2月 17 日から令和3年6月 27 日までに報告された 「ワクチンとの因果関係が否定できない」副反応は1件だそうです。
よく見ると、451件は「情報不足により評価できないもの」
情報が不足しているんだったら、追加調査をして、因果関係を決定する必要があるんじゃないですか?
調査しても、因果関係が否定できないものがあれば、それは副作用とするのが、臨床試験では当然の決まりでは?
患者さんを診ている医師が「因果関係あり」としていても、患者を診ていない分科会の専門家が、「γ:情報不足で評価できない」としているケースがありますね。
分科会の専門家という人たちは、臨床試験に携わったことがあるのでしょうか?
はなはだ疑問です。
部会の資料を読んでいて、疑問に思ったのが、アナフィラキシーの資料(1-4-1)
令和3年2月17日から令和3年6月27日までに報告されたアナフィラキシー事例は計1632 件。
その中で、1297件(80%)が、「十分な情報が得られておらず、症例定義に合致すると判断できない」=アナフィラキシーではない。とされています。
このブライトン分類というのが曲者。
ブライトン分類のカテゴリは、文末に載せますが・・・
例えば、
- 注射直後に、全身性の蕁麻疹と掻痒感がでたとしても、それはレベル4。
- 咳と呼吸困難を訴えて、緊急にエピペン処置が必要になったとしてもそれはレベル4
- くしゃみ・鼻水があり、ぜんそく様の喘鳴があり、帰宅後、お風呂場で死亡したとしても、それはレベル4。
- 全身性掻痒感、注射部位局所の蕁麻疹に意識レベル低下を伴ってもそれはレベル4。
レベル4は、「十分な情報が得られておらず、症例定義に合致すると判断できない」=アナフィラキシーとはみなさない。という、もの。
なぜなら、ブライトン分類は、2つ以上の臓器に対する、明確な副反応がなければ、アナフィラキシーと認めないから。
「循環器症状」がメジャー判定されるには「測定された血圧低下」がありますが、自宅に血圧測定装置がある家庭などマレ。
すなわち、注射後、自宅に帰宅してからアナフィラキシー症状を電話で申告しても、血圧が不明なので、循環器症状は不明扱い。
患者が突然死したら、血圧が測定できないので、循環器症状は不明扱い。
で、結局、レベル4で握りつぶされるということです。
なんだかおかしくありませんか?
症状が出たとしても、なるべく「アナフィラキシー」と診断させたくないという意図が感じられます。
それもそのはず。
ブライトン分類は、アナフィラキシーを診断するための基準ではなく、予防接種に携わる人たちがアナフィラキシーを評価するために作られたもの。
ワクチン開発に携わる人たちにとって、アナフィラキシー報告なんて致命的。
なるべく、アナフィラキシーと認定されないような仕組みになっています。
ブライトン分類の詳しい説明はこちら
―ブライトン分類の導入に向けて―(薬剤疫学)
ちなみに、筆者の一人は現日本ワクチン学会理事長。もう一人は子宮頸がんワクチンを販売している製薬企業のかた。
十分な情報がないからといって、うやむやにしてしまうなんて、医薬品開発に携わった経験からすると、あり得ない対応だと思うのですが。
ワクチンの普及は大事ですが、副反応を軽視するのは良くないんじゃないの?と思います。
それにしても・・・
日本で接種されている新型コロナのワクチンは、ファイザー社とモデルナ社製ワクチン。
いずれもmRNAワクチンと呼ばれるものです。
mRNAワクチンって、おそらく今回の新型コロナワクチンが初めての実戦投入。
遺伝子改変などは理屈上あり得ないとされていますが・・・
どんな長期的な副作用が出るのかも未知数。
10年、20年後に深刻な副作用が起きるかもしれない。
日本人全員にmRNAワクチンを接種して、大丈夫なのかな?と思います。
mRNAワクチンにフルベット(すべてを賭ける)のではなく、人口の1/3くらいは、他のタイプのワクチンにしたほうがリスクヘッジになるんじゃないの?と思うfocuslightsでした。
ブライトン分類
https://www.pmda.go.jp/files/000240175.pdf
臓器 | メジャー症状 | マイナー症状 |
---|---|---|
皮膚/粘膜症状 | □全身性蕁麻疹 もしくは 全身性紅斑 □血管浮腫(遺伝性のものを除く)、局所もしくは全身性 □発疹を伴う全身性掻痒感 |
□発疹を伴わない全身性掻痒感 □全身がちくちくと痛む感覚 □有痛性眼充血 □接種局所の蕁麻疹 |
循環器症状 | □測定された血圧低下 □非代償性ショックの臨床的な診断(以下の3つ以上) ・頻脈 ・毛細血管再充満時間(3秒より長い) ・中枢性脈拍微弱 ・意識レベル低下もしくは意識消失 |
□末梢性循環の減少(以下の2つ以上) ・頻脈 ・血圧低下を伴わない毛細血管再充満時間(3秒より長い) ・意識レベルの低下 |
呼吸器症状 | □両側性の喘鳴(気管支痙攣) □上気道性喘鳴 □上気道腫脹(口唇、舌、喉、口蓋垂、喉頭) □呼吸窮迫(以下の2つ以上) ・頻呼吸 ・補助的な呼吸筋の使用増加(胸鎖乳突筋、肋間筋など) ・陥没呼吸 ・チアノーゼ ・喉音発生 |
□持続性乾性咳嗽 □嗄声 □咽喉閉塞感 □くしゃみ、鼻水 □喘鳴もしくは上気道性喘鳴を伴わない呼吸困難 |
消化器症状 | - | □下痢 □腹痛 □悪心 □嘔吐 |
臨床検査 | - | □通常の上限以上の肥満細胞トリプターゼ上昇 |
レベル1:1つ以上のメジャー皮膚症状および1つ以上のメジャー循環器症状(または/および1つ以上のメジャー呼吸器症状)
2-1:1つ以上のメジャー循環器症状および1つ以上のメジャー呼吸器症状
2-2:1つ以上のメジャー循環器症状(または1つ以上のメジャー呼吸器症状)および1つ以上の異なる器官(循環器および呼吸器は除く)で1つ以上のマイナー症状
2-3:1つ以上のメジャー皮膚症状および1つ以上のマイナー循環器症状(または/および1つ以上のマイナー呼吸器症状)
レベル3:1つ以上のマイナー循環器症状(または呼吸器症状)および2つ以上の異なる器官/分類から1つ以上のマイナー症状
レベル4 :十分な情報が得られておらず、症例定義に合致すると判断できない
レベル5 :アナフィラキシーではない(診断の必須条件を満たさないことが確認されている)
出典:薬剤疫学Jpn J Pharmacoepidemiol, 202 Dec 2015:57